築44年のビンテージマンション
「時間と空間に、アイデアを」をコンセプトに、リノベーション・リフォーム・新築を手がける「KUFURAS(クフラス)」。日々の暮らしに寄り添い、設計やデザインを生かした工夫で、いつまでも愛着を持ち続けられる住まいづくりを目指しています。
小坂裕幸建築設計事務所とコラボレーションしたプロジェクトでは、「マンション01」、「マンション02」、「マンション03」、「マンション04」と、美しくも斬新なデザインの中に暮らしやすさを内包したマンションリノベーションをプロデュース。いずれも単身用や2人暮らし、ファミリー向けなど、多様な暮らしに対応する提案がなされています。
クフラスではこれまで、マンションリノベーションの良さをユーザーに知ってもらうため、自社で厳選した中古マンションを中心に展開してきましたが、この冬に完成した「マンション05」は、同プロジェクトに共感したご夫妻が所有物件のリノベーションを依頼したもの。ご夫妻2人で暮らす築44年のビンテージマンションです。
既存は和室と3つの洋室からなる約82平米の4LDK。南と西に窓がある角部屋で、最上階なので周辺の建物が視界を遮らない見通しの良さが魅力です。各室に手入れが行き届いていて、洋室の壁を抜いて玄関に光を入れるように手を加えるなど、工夫を凝らしたご夫妻の暮らしが見えました。
古いマンションが抱える課題の一つが「温熱環境」。特に角部屋と最上階は眺めの良さがある反面、室内の熱環境が外気の影響を受けやすくなっています。冷気が天井や壁から床へと伝わるなど、このマンションも例外なく冬の寒さが暮らしのネックになっていました。こうした背景を踏まえ、「マンション05」は、性能を上げながら美しく快適な空間をつくり上げることがプランの中心になりました。
機能と意匠を兼ねた住空間
玄関扉を開けると豊かな光が出迎えてくれる「マンション05」。ご夫妻自らが壁を貫いたという玄関横の居室を取り払い、光が届く奥行きのある土間玄関に刷新しました。
居室へと向かう動線は、南向きの窓と造作の壁面収納に沿うようにして真っすぐ延びる廊下。「マンション05」は、この新たに新設した廊下がプランの鍵となっています。限られたスペースを生かすために、最近では省略されがちな廊下ですが、この物件では外気温の影響が大きい窓と家族の居場所との距離を確保するために機能しています。
また、窓に沿った壁面収納は、収納機能を集約する利便性だけではなく、マンションのコンクリート壁特有の梁の凹凸をフラットにしたり、熱橋対策にもつながっています。
「マンション05」のリビングは建物の中心に位置していて、窓は廊下側のみ。明るさを希望するのであれば、西向きの窓を持つ居室と接続するのが一般的です。しかし、ご夫妻が暮らしに求めたのは「夫婦それぞれが心地よい距離を保つ住まい」。仕切りのない大空間ではなく、適度な遮りが必要と考え、あえてスラブ壁を設置。廊下やキッチン側の通路を介して漏れ伝わる西陽を楽しみながら、光と影をつくることで感性を刺激するリビングを実現しました。
朝の光、午後の陽だまり、夕暮れ時。奥へとたどる廊下や居室は、光と影によって朝に夕にその表情を豊かに変えます。「マンション05」は大胆な間取り変更や大規模な設備の移動などは行っていません。キッチンも含め、既存から大きくレイアウトの変更はせずとも、部材同士を取り付ける距離感や納まり、ラインなどの繊細な整えを重ねて再構築した結果、たどり着いた美しい空間なのです。
新旧の素材が同居する豊かな風合いと、温熱環境への配慮をデザインに落とし込んだ「マンション05」。建築家×クフラスのマンションリノベの可能性がさらに広がりを見せています。