北海道へ入植して4代目。農業を営むHさんは、子どもが産まれたことをきっかけに、家を建てた友人・知人に相談しながら家づくりを計画し始めました。機能性・耐久性に優れ、そして木の温もりが感じられる環境に優しいエシカルなお家を想像していたというHさん。「ハウスメーカーの話を聞いても、どこの国の材料を使っているか分からない所ばかりで、これはお金の使い方としてあまりかっこよくないな」と思いました。

畑の真ん中にあるHさん宅。周囲の風景に自然になじむ黄土色の塗り壁に、レンガ色の赤い屋根が印象的
畑の真ん中にあるHさん宅。周囲の風景に自然になじむ黄土色の塗り壁に、レンガ色の赤い屋根が印象的
シンプルながらもゆったりとした広さを確保した玄関。格子戸からリビングへ出入りできる。右奥はお手洗い、突き当りは裏玄関につながっている
シンプルながらもゆったりとした広さを確保した玄関。格子戸からリビングへ出入りできる。右奥はお手洗い、突き当たりは裏玄関につながっている

そんなとき紹介で出会ったのが木村建設で、そこで同社の「木組みの家」のことを知りました。その後実際にモデルハウスを見学し、木の香り・和紙の壁・足音の残響・自由度の高い間取りなど、直感と体感でいいと感じたといいます。「ここなら、地元の素材を使って地元の人がつくる『地域に貢献できる面白い家』を建てられると思いました」。

現しの勾配屋根がもたらす開放感が心地よいLDK。ダイニングに隣接して和室を設けている。ダイニングセットや格子戸は職人による造作
現しの勾配屋根がもたらす開放感が心地よいLDK。ダイニングに隣接して和室を設けている。ダイニングセットや格子戸は職人による造作
ダイニングから一直線に延びる廊下を見る。将来の暮らしを見据えて幅を広く取った。老後でなくとも普段の室内での移動にゆとりが生まれた
ダイニングから一直線に延びる廊下を見る。将来の暮らしを見据えて幅を広く取った。老後でなくとも普段の室内での移動にゆとりが生まれた
壁と天井、そして畳が同系色で落ち着きを演出する和室は、仏壇を造作しシンプルに
壁と天井、そして畳が同系色で落ち着きを演出する和室は、仏壇を造作しシンプルに

完成した新居は、遮る建物がない広大な景色の中に建つ、赤い屋根の平屋です。リビングの3間幅の大開口からはその贅沢な四季折々の風景を味わえます。室内は、天然素材の質感と手仕事が息づく空間。柱や梁が見える十勝産無垢カラマツの現しの構造は、職人の目と手で数千分の一ミリの精度を確かめながらつくり上げたものです。

一面に設けた大開口の向こうには、見渡す限り畑が広がる。室内にいながら、四季折々の風景を肌で感じることができる
一面に設けた大開口の向こうには、見渡す限り畑が広がる。室内にいながら、四季折々の風景を肌で感じることができる
リビングの大開口には障子を設置。障子の開閉により光の入り方が変化し、空間の印象がより味わい深くなる
リビングの大開口には障子を設置。障子の開閉により光の入り方が変化し、空間の印象がより味わい深くなる

壁には左官職人の手塗りによる土壁や、植物原料の壁紙を採用しています。ダイニングセットや障子・格子戸など、道内各地の職人たちによる造作家具や建具も、空間と美しく調和します。「家づくりは、いろいろな人の手仕事を知るいい機会にもなりました。自然素材を使って、丁寧につくられた空間や家具を毎日眺めていると、エネルギーをもらえるような気がします」と奥さん。

職人の丁寧な手仕事が伝わる木組みの家。釘や金物を使わず木と木だけで組まれらた構造は、高い耐久性が特徴
職人の丁寧な手仕事が伝わる木組みの家。釘や金物を使わず木と木だけで組まれらた構造は、高い耐久性が特徴
十勝産カラマツ無垢材の構造が美しい小屋裏。季節物の洋服やスキー、書籍などを十分に収納できる広さ
十勝産カラマツ無垢材の構造が美しい小屋裏。季節物の洋服やスキー、書籍などを十分に収納できる広さ

小上がりの畳敷きの床を設えた寝室。上部の土壁は黒漆喰塗りで、家族も参加して軍手で仕上げたもの
小上がりの畳敷きの床を設えた寝室。上部の土壁は黒漆喰塗りで、家族も参加して軍手で仕上げたもの
将来、必要に応じて2室に分割できるようにした子ども部屋。屋根裏収納も併設している
将来、必要に応じて2室に分割できるようにした子ども部屋。屋根裏収納も併設している

新しい住まいでご夫妻が実感したのは、暮らしの快適さ。「これまでの家は寒くて、結露に悩まされていましたけど、この家は断熱がしっかりしてるうえ、床下暖房でムラなく空間を暖めているから、室温が一定です。一年を通して暑さ・寒さを気にすることなく、快適に過ごせます。薪ストーブを導入しましたが、暖を取る効果だけでなく、子どもにとって火の教育面でもいいことに気づきました。周りの自然から乾いた木を集めて、種火をつけて、空気を送り込む。火の扱い方を身に付けておけば、もしかしたら非常時に生き延びられるかもしれない。日々の生活の中で、自然に生きる力を身に付けられるってとてもいいことだと思います」。

リビングで存在感を放つ薪ストーブ。背面の壁は土壁、炉台には札幌軟石を採用した天然素材の質感を存分に味わえる空間
リビングで存在感を放つ薪ストーブ。背面の壁は土壁、炉台には札幌軟石を採用した天然素材の質感を存分に味わえる空間
機能性を考慮しPタイルの床を採用した水まわり。清潔感あふれるホワイトで洗面台や壁を統一した
機能性を考慮しPタイルの床を採用した水まわり。清潔感あふれるホワイトで洗面台や壁を統一した

家中を走り回ったり、転がったり、至るところに隠れたり。広くなった家を、子どもたちも存分に楽しめている様子。「音を気にする必要もなくなったので、子どもたちがのびのびと遊べるようになりました。夜ご飯を食べた後からお風呂に入るまで、永遠と追いかけっこが続きます」と、奥さんは笑顔で語ってくれました。