電気、ガス、灯油と、住まいの熱源にどれを選ぶのかは、家づくりの中でも重要なポイントです。しかもガスには都市ガスとLPガスがあり、それぞれさまざまな事業者がいて「どこを選んだらいいのか分からない」という人も多いのでは?そこで今回はガスのプロフェッショナル、札幌アポロ(株)の八十嶋浩之さんにお話を伺いました。
販売部販売課 課長
八十嶋 浩之さん
北海道札幌市生まれ。2002年4月に札幌アポロ(株)に入社。一般家庭の地域担当として家庭用のガス機器販売・保安業務を経験。入社4年目から販売部販売課に所属し、ハウスメーカー・工務店へのLPガス・灯油・関連機器の提案販売や、業務用の需要家へLPガス、燃料油、関連機器の提案販売を行う
電気・ガス・灯油の
コストや特性を知り
熱源を選ぶ
家を建てるときには、間取りや性能のほかに、給湯や暖房などの熱源をどうするかも考えなければいけません。「コンロがガスなので給湯や暖房もガスにしたほうがいいの?」「暖房を灯油にするかガスにするか迷う」「オール電化も捨てがたい」など悩みどころ。また昨今は電気やガスも提供する会社が多く、プランも多岐にわたるので選ぶのが大変です。
特にガスについては都市ガスとLPガスの違いなど、よく分からないことも多いですよね?それぞれの熱源の特性や正しい知識を得た上で、家を建てる際の熱源選びをすることが大切です。
家の熱源としては電気・ガス・灯油の3つの選択肢があります。さらにガスは「都市ガス」と「LPガス」の2種類に分けられます。電気は火を使わないという面は安心ですが、イニシャルコストが高く、給湯ボイラーが大きいので設置場所を確保する必要があります。灯油はイニシャルコストが安いのが特徴ですが、最近は灯油価格の上下が激しいですね。ガスはボイラーもコンパクトで初期費用も低めですが、ランニングコストを気にされる方も多いでしょう。
また、地震などの災害時には、電気や都市ガスは供給元からのルートが絶たれると大規模な供給停止が起こり、復旧まで時間がかかるというケースも。そのほか、設備機器の耐久年数やメンテナンスコスト、ランニングコストなどもシミュレーションして熱源を選ぶのがオススメです。
土地選びの際に
気をつけたい
都市ガスとLPガス
さて、ガス会社に寄せられる皆さんの声で多いのが「都市ガスとLPガスって何が違うの?」という疑問です。使う側にとって一番分かりやすい違いは供給方法です。都市ガスは各地域で道路の下に導管(ガス管)が設置され、各戸へ供給されます。一方、LPガスはガスが入ったボンベを事業者が個別に配送します。これは皆さんもご存知でしょう。
導管による供給が必須の都市ガスは、必然的に供給できるエリアが決まっています。一方、LPガスは対応エリアが広く、導管がない地域にもガスを供給できるのが特徴です。これは家を建てる際の「土地選び」に関連してきます。都市ガスを選びたい場合はエリアの選択肢が限られるケースもあります。またLPガスや灯油は戸外の敷地内に供給設備を置く必要があるので、それも合わせて土地探しの段階から気に留めておくとよいでしょう。
原料の違いでいうと、都市ガスはメタン、LPガスはプロパンまたはブタンが主成分です。実は同じ体積ならLPガスは都市ガスの2倍以上の熱量を出すことができるのです。ただし家庭用のガス機器は出力火力が決まっているため、ガスコンロなどは同じ火力になるよう機器の方で調整されていて、使用する際の火力は変わりません。ガスコンロに「都市ガス用」「LPガス用」があるのはこのためです。間違えると大変なことになるので、しっかり確認してからガスコンロを購入しましょう。
LPガスは割高?
各社で価格が異なる?
ガス会社も選べる時代
「LPガスは高い印象がある」とよくいわれます。それも含めた「ランニングコスト」について少し触れてみましょう。都市ガスとLPガスを比べた場合、確かに1㎥あたりの使用料金はLPガスの方が割高ですが、暖房を使う場合の基本料金は都市ガスの方が高く設定されています。
また使用量の算出についてですが、前述の通り「LPガスは都市ガスの2倍以上の熱量を出す」という特徴があります。同じ量の水をお湯に沸かす際に使うガス量が、LPガスを1とすると都市ガスは2必要ということです。したがって、1㎥の単価だけ見れば都市ガスの方が安く感じますが、基本料金含めトータルの使用量で考えると、皆さんが感じるほどの差にはなりません。
LPガスを供給する会社は多く、実はそれぞれ価格も異なります。工務店に「何社か比較したいので料金表を出してください」とお願いすると、各社の違いが分かりますよ。当社では、家の間取りや設備、家族構成やライフスタイルをお聞きして、その世帯に必要な熱量を算出し、シミュレーションしています。
今はガス会社が電気も扱ったり、その逆もあり、ガスと電気のお得なセットプランが増えています。LPガスの強みは「家に燃料がある」こと。それを生かし、災害時に非常用電気として使えるような小型ガス発電機など「電気をつくる」ことも可能です。熱源はお仕着せではなく「選ぶ」もの。多様化する設備やプランの情報をしっかり集めて検討する時代です。