幅を細めにそろえた屋久島地杉材を横に張ることで、繊細さが感じられる外観。2階の一部は木戸になっていて、通風や採光のために開閉できるよう設計されている

自然がもたらす“体感の心地よさ”を追求した住まい。外壁や外塀は屋久島地杉で仕上げ、室内はすべてオリジナルで調色した土壁に。ドイツ基準のパッシブハウスに認定されるほど高性能な室内は、冬季でも窓から射し込む太陽熱だけで暖かく、室温は20℃を下回らないといいます。家のどの窓からも緑を楽しめる設計で、都心部であることを忘れるような四季折々の多彩な移ろいを感じられる住まいです。

◎家族構成/夫婦40代、子ども1人
◎構造規模/木造・2階建て
◎設計/菊池佳晴建築設計事務所 
◎施工/(有)今野建業

インテリア選びは、気持ちいい住環境に欠かせない重要なポイント。奥さんも「永く愛着を持って使える家具や照明を選んだことで空間の魅力が増して、生活がすごく豊かになった感じがします」という。また自然の力を活用した高い住宅性能と24時間熱交換換気システムで、安定した温熱環境を実現。一年を通して心身ともに心地よい暮らしの場となっている

キッチンに立つと、大きな窓から庭全体が見渡せる。景色を楽しむFIX窓、庭に出るための掃き出し窓、換気用の小窓と、目的・用途の異なる窓を組み合わせることで、暮らしの利便性や機能性を高めた。野菜を育てたり、芝の手入れや落ち葉拾いをしたりと、庭を活かした暮らしの楽しみを見出している菊池さんご一家。庭キャンプやテラスでのバーベキューも企画するなど、広くて緑豊かな庭が、おうち時間の楽しみを広げている

きらめく木漏れ日が、外付けブラインドの隙間から射し込むリビング。光と影が織りなす美しいコントラストを家の中に居ながらにして楽しめる。内装には、北海道産ナラ材のフローリング、地元の土をはじめ3種類の土をブレンドした土壁、スギ材で仕上げた天井と、五感で癒やしを得られる自然素材を用いた

パントリー内には、奥さんが家事や事務作業を行うためのワークスペースを配置。心地よいこもり感を持たせるために、あえて天井高を低めにしたという。今は、テレワークが増えた菊池さんの仕事場としても重宝しているそう

リビングの一角、宙に浮いているかのような意匠性の高い階段の下のスペースをピアノ置き場に。お子さんが奏でる軽快なピアノの音が家に響き渡る

2階の廊下に沿って本棚を造作した。飾り棚の部分には各自がおすすめの本を並べて、家族みんなで共有しているそう

障子越しの陽光や映り込んだ木々の影が趣深い2階の寝室。開放感あふれる1階に対し、2階には内に閉じながら「外」を感じられる工夫がある

子ども室と寝室の2ヵ所から出入りできる2階テラスは、気分転換に最適。ハンモックに揺られたり、木製ベンチに腰かけたりして、気軽に外の空気を吸うことができる

寝室や浴室などの完全なプライベートゾーンは2階に集約。洗面脱衣室の横に洗濯室、その隣に洗濯物をたたむのに便利な和室を設けるなど、家事の効率化を図る工夫も

モールテックスで造作した特別感のある浴室の窓からは、植栽で彩られた坪庭の眺めが楽しめる。昨年の夏は坪庭の木にヒヨドリが営巣し、その子育ての様子を観察するのが日々の楽しみになっていたそう。浴室が緑あふれる外部空間とつながることで、心と身体を癒やすバスタイムがさらに充実してリラックスできそうだ
お風呂用の温水の温度調整のために導入した薪ボイラー。給湯には太陽熱を利用しているが、曇り続きのときには昔ながらに薪を焚いて湯を沸かしている
素材も景色もエネルギーも、自然を多面的に取り込んだ空間に、上質なインテリアが心地よさを添える
門扉から玄関へのアプローチの床に敷き詰めたのは、地元産の秋保石。玄関ポーチの一角には水が流れる池があって、そこで飼い始めたメダカの餌やりが日課に

広々とした庭にはモミジなどの庭木が植えられ、四季折々に住まいを彩る。「街なかであればあるほど、自然を感じられる家を提案したい」と菊池さん

都心部の住宅街という立地では、プライバシーの確保が大きな課題。住まいと統一感を持たせるために、建物の外壁と同様の素材で外塀を立て、植栽を交えながら周囲の視線を遮り、安心感のある住空間を実現している