太陽エネルギー活用、次の一手

PV+蓄電池。その先のさらなる太陽エネルギー活用の可能性はないのでしょうか。そのカギは前述の「働く季節」ともう一つ、「太陽の角度」です。ご存じのとおり、太陽は夏には高い、冬には低い軌道を通ります。つまり太陽エネルギーを捉えるためには、夏は水平面、冬は垂直に近い方が有利なのです。

連載1回目で取り上げた、エネマネハウスをもう一度見てみましょう(図10)。PVは傾斜角・方位角が可変、太陽熱暖房の集熱面と開口部は南面垂直に設置されていました。まずPVは一年中働くのですから、夏は寝かせて冬は立てる……と傾斜角を可変にすることで太陽を上手に捕まえ年間の発電量を増やせます。おまけで開口部の日射制御も出来るのですから、一挙両得です。毎日角度を変更するのは非現実的にしても、春と秋に年2回、衣替えがてらにちょっと操作するだけでも効果がありそうです。

図10 エネマネハウス東大での太陽活用
図10 エネマネハウス東大での太陽活用
夏と冬では太陽の高度が全く違います。太陽光発電は傾斜角を変更して年中フル発電、暖房の熱は南面で捕まえます。

一方で暖房が必要なのは冬だけですから、垂直面で太陽を捉えた方が効果的です。エネマネハウスではまず南壁面の集熱器で集熱した不凍液循環で床暖房もしていましたが、前述の通り「冬専用」の過剰設備なので、まあ正直これはペイしません。本命は、開口部を利用した「ダイレクトゲイン」でした。

古くて新しいダイレクトゲイン

採光や眺望のために窓は必ずつけるのだから、そこから日射を取り入れれば暖房の足しになるだろう……というのがダイレクトゲインです。原理はえらく単純ですが、成り立たせるためには日射を取り入れつつ室内の熱を逃さない高性能のガラス・サッシが不可欠です。

日本ではこのガラス・サッシの性能が非常にプアだったため、日射を取り入れるそばから熱が逃げてしまい、ダイレクトゲインは長年「絵に描いた餅」でした。最近になってようやく高断熱・高日射取得を両立させた開口部が登場したおかげで、実用化の目処がたってきたのです。

障子の文化の影響なのか何なのか、日本人は大きな窓が大好き。さらに日本の太平洋側は冬でも日射に恵まれています。南側の垂直面に高性能の大開口を設けて冬の暖房に活用するダイレクトゲインは、わずかな追加コストで大きな効果が期待できます。

次のページ デカスロンでも太陽熱は高評価