「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、山形県を拠点に注文住宅を手がける布施剛臣建築設計事務所の布施 剛臣さんです。
まちなかをてらす
土地が持つ地域の特性を生かしたうえで、その場所に眠る魅力を見つけて磨き上げたり、新たに輝かせるデザインを加えたりすることで、そこに暮らす人たちのまち(街並み、風景)やそこに暮らす人たちのなか(室内空間、暮らし)を明るくてらす・仲良くつなぐ、そのような住宅づくりを目指しています。
「まちなかをてらす」住宅づくりの5つのテーマは以下の通りです。
1.くらしの幹をつくる -Create the Core of Life-
2.建物に軒をつくる -Make the Eaves-
3.まちにひらいた開口をつくる -Make the Opening for Community-
4.地域の自然を取り込んで包む -Take in the Local Environment and Cover-
5.接地性・平屋性を保つ -Keep the Grounding Property-
物件ごとに受け取る建て主さんからの要望にこれらの5つのテーマを組み合わせながら、その地域ならではの快適で心地よい建物を提案しています。
軒による外との適度な距離感がもたらす、雪国の快適性
「小白川の家」の計画地は、山形県山形市の閑静な住宅街の一角に位置し、南面に千歳山、北面に盃山を望む景観に恵まれた敷地でした。本住宅の建て替え計画では、解体前の既存住宅が保有していた敷地の高低差を最大限に生かしました。南側の前面道路に面する1段目を「前庭・駐車ゾーン」、1.2m高い地盤面に立つ2段目を「1階フロアゾーン」、吹き抜けや寝室、オープンスペースなどがある3段目を「2階フロアゾーン」とした段々状に連なる断面構成が、計画の大きな特徴の1つです。
また外構計画では、リビングからテラスを介して南に抜ける先にアオダモと野芝のグランドカバーを設け、建物に潤いと安らぎを加えています。
この段々状の断面構成と南北に広がる山々への眺望が組み合わさり、内と外でさまざまな視点の変化やつながりが立体的に生まれるような住宅を目指しました。
間取りの特徴は、朝日が降り注ぐ建物の東側に、和室・リビング・ダイニングが一直線に広がる「リビングスペース」を配置し、これらを取り囲むように設けた「コの字型のデッキテラス」が内外でつながる平面構成です。1階のリビングスペースの上部には吹き抜けを設け、上下階を空間として一体的に結んでいます。
雪国の家づくりでは、断熱性能も重要です。この住宅の設計では、省エネルギーで断熱性の高いQ1.0住宅の性能基準を満たし、寒さが厳しい山形において、ご家族が冬も快適に暮らせる建物づくりを目指しました。なお、この建物は「やまがた健康住宅」の設計認証申請を行い、県の審査と現地検査を受け、断熱性能レベルⅡ(UA値0.34w/㎡K以下)の認定を受けています。
さらには、軒の深いテラス空間を設けて外と適度な距離感を保ち、断熱に優れた大開口の窓を使用して内外を緩やかにつなげることで、雪国の冬における快適性のさらなる追求とのびやかで豊かな暮らしの提案を行っています。
このようにして、暖かい室内環境を整えながら、冬でも外との関係を制限することなく、開放的でのびのびと暮らせる住宅を実現することができました。
■建築DATA
山形県山形市・Hさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども1人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/133.01㎡(約40坪)設計/布施剛臣建築設計事務所 布施 剛臣
施工/(株)高木
撮影/荒木 淳一