今回ご登場いただくのは、東京-東北-北海道でプレミアムオーダーキッチンのデザイン・施工・販売を手がける、(同)ノルド・リネアタラーラの堀川洋志さん。年々需要が高まるオーダーキッチンについて、国内外の事情を交えて話をうかがいました。
堀川 洋志さん北海道出身。建築資材商社の国際部勤務、カナダでの住宅会社マネージャーなどを経て、2018年にオーダーキッチンのリーディングカンパニーである株式会社リネア・タラーラ(東京)の下で合同会社ノルド・リネアタラーラの責任者として新ブランドをスタート。現在、東京-東北-北海道でのプレミアムオーダーキッチンのデザイン・施工・販売をしながら各地でキッチンコーディネーター/プランナーの育成に取り組んでいる
共働き時代の今
住宅におけるキッチンは
QOLを向上させる場所
ここ数年、キッチンに対するユーザーの考えは大きく変化しています。共働き家庭が増え、それに伴う食洗機をはじめとする家電や設備機器の進化などから、求められる設計が根本的に異なっているのです。
QOL(生活の質)を向上させるうえで、キッチンの比重はとても大きく、食器洗いやつきっきりの調理などクリエイティビティのない作業は家電設備にお任せして、テーブルセッティングや食事を楽しむ時間をゆっくり過ごしたい。または、長時間作業をするキッチンを快適にしたい。そんな方が増えているのではないでしょうか?
一方で、日本の住宅におけるキッチンはほとんどが規格化されたキッチンメーカーの既製品です。シンクやコンロ、食洗機やオーブンの大きさ、換気扇、食器棚のサイズなどから割り出した「必要なスペース」を確保し、そこに既製品をはめ込んでいくスタイルです。そのためカスタマイズは、素材や色、バックセットをどうするかぐらいの選択肢しかありません。
コストを抑え、空間を効率よく使うという意味では、規格化されたキッチンが住宅メーカーで主流になるのもうなずけます。ただし画一的なキッチンは個性が出しにくく、なかなかユーザーが思い描くキッチンになりにくいのがデメリット。既製品が主流な日本のキッチンは、2000年ぐらいから画一的であまり変わらず、ある意味で世界のキッチンの潮流からはガラパゴス化しているといえるでしょう。
憧れのキッチンを実現できる
オーダーキッチン
そんな中で、ここ数年は注文住宅におけるオーダーキッチンが増えています。キッチンメーカーの既製品ではなく、工務店・設計事務所が家に合わせ独自に設計し造作するキッチンです。オーダーキッチンのメリットは、レイアウトから動線、設備機器、細かな収納についてなど、イチからオリジナルのキッチンをつくり上げていけること。自由度が高く、家の雰囲気にマッチするものがつくりやすいのがメリットですが、工務店は必ずしもキッチン製作のプロというわけではないので、機能性や使い勝手、独自性に欠けることも。IHコンロや食洗機、オーブンなどの家電は、人気の海外ブランドを導入したいというニーズも多く、国産メーカーのものとは規格が異なるため、キッチンまわりの設備機器の施工や、収納部分の細かな設計など、専門知識が必要なケースも多いのです。
また今はインターネットで世界中の情報をキャッチできる時代。ユーザーがSNSなどで見て憧れたキッチンを参考にしたいと考えたり、世界のトレンドを取り入れたいと思ったときに、対応できる最新の情報や知識なども必要になっています。
ユーザーのニーズが多様化し、グローバル化している中で、よりこだわりたいという要望に応えるために、オーダーキッチンメーカーであるノルド・リネアタラーラでは「プレミアムオーダーキッチン」を提案しています。開業90周年を迎えた札幌の老舗キッチンメーカー「SUZURAN KITCHEN(スズランキッチン)」とコラボレーションし、札幌ショールームで各メーカーの機器を体感しながら、プレミアムオーダーキッチンをじっくり検討していただける環境もご用意しています。
世界のトレンドを知り
日本流に取り入れる
プレミアムオーダーキッチン
プレミアムオーダーキッチンの基本的な考え方はシンプルです。設計事務所や工務店、設備業者など家づくりに関わる各分野のプロたちとチームを組み、一大プロジェクトとして、お施主さんが求める「唯一無二のキッチン」を完成させること。キッチンの使い勝手やレイアウト、デザインの好みは千差万別です。他者と比べたりするのではなく、その人が満足できる、納得できるものが、プレミアムオーダーキッチンなのです。
もちろん、要望に応えるだけでなく、世界のトレンドや設備など、最新情報を踏まえたプラスαの提案をしていくのも、ノルド・リネアタラーラの理念。
世界的に見ると、キッチンのトレンドを担うヨーロッパや北米では、毎年各キッチンメーカーがその年のデザインコレクションを発表します。家を建てる人はそれを見て工務店や住宅メーカーを通さず、直接キッチンメーカーにキッチンを購入しに行くのです。まるでファッションブランドのコレクションやプレタポルテのような感覚ですね。日本でそれを行うのはなかなか難しいですが、常に世界のトレンドを取り入れたノルド・リネアタラーラのショールームでは、そのテイストを体感することができます。
キッチンは、もはやただ家事を行う場所ではありません。クリエイティブで楽しい家の主役になれる空間です。オーダーキッチンに正解はない、失敗もない。その人にとって唯一無二の価値ある場所。それを創造するのがキッチンのプロである私たちです。
Case.1 札幌市・Tさん宅
プロ並みの腕を持つ料理好きのTさんこだわりのキッチン。業務用コンロや業務用冷蔵庫、洗い物用シンクなど、無機質なステンレスが目立つ設備を隠し、黒と赤を基調にしたスタイリッシュなデザインに仕上げました。
Case.2 宇都宮市・Tさん宅
壁付けのシンクにアイランドの作業台、壁面にはオーブンを組み込んだ大容量の収納と効率的なレイアウト。白を基調とした明るい雰囲気のキッチンは、シンプルな中に収納の取っ手を真鍮にして華やかさを添えています。
Case.3 札幌市・Hさん宅
ドイツのキッチンメーカー「ガゲナウ」の調理機器にあわせ、マットな黒や木の質感、大理石調など素材感を使い分け。ストウブの鍋など見せたいものはキッチン下のオープン棚に収め、「見せる」と「隠す」をうまく配分しています。