緩やかにうねる雑木林と丘陵地の畑、そして彼方に臨む夕張の山並み。目の前に広がる壮大な風景に惹かれ、栗山町への移住を決めた料理人のオーナー。京都、イタリア、フランス、東京で暮らしていく中で「いつか、故郷の北海道で自分の店を持ちたい」と考えていたオーナーにとって、絶景を望むその丘は、まさに約束の地でした。
2018年に土地を取得したオーナーに、新築依頼先の候補として友人が紹介してくれたのが武部建設。「町のあちこちで見かけて目に留まった建物の多くが武部建設が建てたものと知って、安心して新築の相談ができました」。
アンティーク家具や手仕事、自然の素材を生かしたインテリア、雑貨が好きなオーナーが目指していたのは、それらがしっくりとなじむ「新しいけれど懐かしい」空間。また、恵まれた眺望を生かす開口を随所に設けたいと考えていました。2019年、店舗新築の依頼を受けた武部建設は、オーナーのイメージに合う「モダンクラシック」がコンセプトの空間をカタチにするため、柱や梁などに豊富な古材ストックを生かしたプランを提案。さらに、建築家の須貝日出海さんをはじめ、構造設計家の山脇克彦さん、砂川の建具職人などと協働し、設計・施工にあたりました。
大工を社員として直接雇用し、若い大工の育成にも力を入れている武部建設。住宅以外の中大規模木造建築では、棟梁以下中堅大工、見習い大工がチームとなって施工する体制が特徴です。今回も船田慎人棟梁のもと、大工たちがチームワークを発揮。オーナーは「武部建設と建築チームの専門家、職人さんが得意分野を生かしながら、私の細かな要望が叶うよう尽力してくれたのが嬉しかったです」と振り返ります。
工事中、オーナーも家族や近所の人たちの手を借りながら、壁の塗装仕上げに参加。玄関に取り付けるメイン扉のアンティーク加工にも挑戦しました。「照明器具も洞爺湖のガラス作家、高臣大介さんに制作を依頼。時間をかけて一つひとつ吟味して、みんなでつくり上げることで1足す1が3にも4にもなり、想定を軽々と超えた理想以上の空間ができました」。
2021年8月、移住の決意から3年の時を経て、オーナーの夢が結実。カバの柱、センの梁、カツラのテーブルなど古材の力強さと温もりを生かした空間は、大きな吹き抜けと開口が設けられ、開放感たっぷりです。窓越しに広がる借景は光の移ろいで刻々と表情を変え、見飽きることがありません。夜の帳が下りれば、個性豊かなガラスのシェードの灯りが店内をやわらかく照らし、古材や塗り壁の陰影を引き立てます。「お客様にも、自分の家のように落ち着くと好評です。まだ外周りが未整備なので、これからも武部建設といろいろと相談しながら、外構や庭の整備をしていきたいと思っています」と、オーナーは笑顔で話してくれました。