命や健康に直結する性能面を
大幅に改修しアップデート
増子建築工業は今年で53年目を迎える地域主義工務店。そのリノベーション事業部である「りりこ」に、待望のモデルハウスがオープンしました。築44年の中古物件をリノベーションしたこちらの家は、設計を前原尚貴建築設計事務所が担当したことも特筆すべき点です。「『りりこ』のコンセプトは、“想いをつなぐ、リノベーション”。今回はモデルハウスということで、私たちの価値観を超えた新たな発想を盛り込んでみたいと思い、地元建築家の前原さんに設計を依頼しました」と増子則博代表取締役は語ります。
「最小限の改修で最大限の効果を」との方向性のもと、建物の形を残して進められたリノベーション。最も重視されたのは、性能面の改修でした。解体してみると無断熱だったため、しっかりと断熱材を施し、窓には高性能ペアガラスを採用。これにより断熱性能は5.9倍向上し、UA値もこの地域のZEHレベルをクリアする0.56W/㎡kに。一年を通して心地よく過ごせる空間を実現しました。さらに内部の壁面を増やし、耐力面材や接合金物で補強することで、耐震性能も3.8倍アップしています。
「住宅性能はヒートショック予防や地震から身を守るなど、生命に大きく関わるもの。ですからリノベーションには、デザインや間取り、設備機器の改修だけでなく、性能の向上が必須だと考えています」と増子さん。この家も新築と同等以上の高性能な躯体へと変貌を遂げ、安心と快適が担保されました。
暮らしやすい間取りの中に 趣あるエイジング空間を実現
44年の重みを感じさせる外観は大きく変えていない一方、内部は現代の暮らしに合わせた間取りに変更されています。中廊下で区切られていた各居室とダイニング・キッチンの壁を取り払ってワンルーム化し、LDKと客間を合わせて約20帖の大空間に。水まわりは北ゾーンにまとめ、LDKと離して使い勝手の良い距離感を確保しているのもポイントです。さらに2階の子ども部屋には、小屋裏の余剰空間を利用してロフトを設けました。わずか23坪の空間を広く立体的に活用する、前原さんの設計手腕が光ります。
もう一つの特徴は、既存のものを徹底して再生利用していること。この家はもともと80代のおばあさんが一人で暮らしており、築年数の割には良好な状態を保っていました。「そこで前原さんには、使えるものは使ってくださいとお願いしたんです」と増子さんは振り返ります。例えば玄関土間に敷き詰められていた雄勝スレート石はそのまま活かし、木製の濡れ縁は客間の前に移設。玄関の両袖に付いていた型ガラスは階段の明かり採りに利用しています。「古き良き味わいを大切に、経年変化を“経年美化”として感じられる家に再生できました」と語る前原さんに対し、「前原さんの斬新なアイデアを通して、年代物を残し、使い続けることの格好良さを改めて再発見できました」と笑顔を見せる増子さん。工務店と設計事務所、2社の持ち味が相乗効果を生み、新たな魅力や価値が詰まったビンテージハウスが誕生しました。
株式会社 増子建築工業・りりこ
大槻町リノベーションモデルハウス
郡山市大槻町字人形担東97-5
TEL/024-933-0301
営業時間/完全予約制
https://www.rereco.net/modelhouse_otuki