「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2021」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、宮城県仙台市を拠点に注文住宅を手がける菊池佳晴建築設計事務所の菊池 佳晴さんです。

世代を超えて持続可能な住まい

異常気象が毎年のように続き、地球環境や自然との向き合い方を社会問題としてだけでなく、各個人が考えさせられる時代になってきました。そんな今だからこそ、新建材や機械設備にできるだけ頼らず、身近にある自然素材(木、土、石…)や自然エネルギー(太陽、風、水…)を意匠的にも機能的にも住まいの設計に生かして、周囲の自然の恵みを感じながら長く愛され、使い続けられる住まいをつくることが必要だと感じています。

将来の地球環境を見据え、自然環境と呼応しながら、世代を超えて持続可能な住まいを設計したいと考え、実践しています。

大開口のあるLDKは、季節に合わせて温熱環境をコントロールできる仕組みを採用
大開口のあるLDKは、季節に合わせて温熱環境をコントロールできる仕組みを採用

今日、心地いい設え

建築地は閑静な住宅街にあり、互いにプライバシーを遵守しながら生活する画一的な風景が見られました。とりわけ本敷地は南一面が接道で、日射取得と開放感、プライバシーの確保が課題でした。そこで南を水上とする2棟の片流れ屋根とし、接道する敷地の南側には寝室棟、北側にはLDK棟のコの字型の平屋を提案しました。

片流れ屋根により外からの視線を遮りながら陽の光と開放感が感じられるプランとし、1日の日射の変化や一年の温度変化をうまく取り入れて、自ら快適性をコントロールできる、豊かな居住空間を目指しました。  

メンテナンスが容易な木板張りは、新陳代謝によって恒久的な風景となる
メンテナンスが容易な木板張りは、新陳代謝によって恒久的な風景となる
西側からは、特徴的な屋根の形状がよく見て取れる
西側からは、特徴的な屋根の形状がよく見て取れる

家族が集うLDKは南面の大開口によって、冬季は太陽光の熱を利用して暖房負荷を低減し、中間期は心地よい風が家の中を通り抜けます。陽射しが強い夏季は、ブラインドで過剰な日射を遮蔽。高断熱性能と相まって、効率的な光熱費削減と環境負荷低減を実現します。 

また、敷地の700㎜の高低差を生かし、リビングの床面とファミリールームの造作机をデッキテラスでつなぎました。これにより相互の室の境界は、季節や家族の成長によって伸縮し、床面積以上の広さを感じられます。

流れ行く歳月の機微を感じながら、自らの手で心地よさをコントロールし、持続していく住宅です。

キッチンからはリビングやデッキテラスの生活の賑わいが一望できる
キッチンからはリビングやデッキテラスの生活の賑わいが一望できる
道路からの視線を遮りつつ光を入れる屋根勾配を設計。リビングの床面とファミリールームの造作机がデッキテラスでつながる
道路からの視線を遮りつつ光を入れる屋根勾配を設計。リビングの床面とファミリールームの造作机がデッキテラスでつながる
窓の配置によって換気が効率的に行われるファミリールーム
窓の配置によって換気が効率的に行われるファミリールーム
ロフトから庭や遊び場、アウトリビングや物干し場など汎用性のあるデッキテラスを見る
ロフトから庭や遊び場、アウトリビングや物干し場など汎用性のあるデッキテラスを見る

コンパクトながら落ち着きのある和室
コンパクトながら落ち着きのある和室
洗濯・物干し室は、家事動線を考慮して配置した
洗濯・物干し室は、家事動線を考慮して配置した

■建築DATA
宮城県仙台市・Kさん宅 
家族構成/夫婦30代、子ども2人
構造規模/木造・平屋建て 
延床面積/108.48㎡(約32坪)

設計/菊池佳晴建築設計事務所 菊池 佳晴、古山 紗帆
施工/(有)今野建業

撮影/越後谷 出

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