南面大開口のデザイン
冬の小春日和に縁側でひなたぼっこをするのは日本の原風景の一つです。縁側がほとんどなくなってしまった今でも、南側の大きな窓辺にできる陽だまりの心地よさは何物にも代えがたいものがあります。
日本の住宅は伝統的に南面の窓を大きく取り、眺望、明るさ、開放感、庭との空間的な一体感を確保しつつ、冬には暖かな陽射しを取り込み、夏は庇と簾などの日除けで暑さに対処してきました。こうした窓には、引き違いの掃き出し窓と呼ばれる、床から天井近くまで開放される大きな窓が使われています。この引き違い窓は、生活にはフィットするのですが欠点も多く、またデザイン的には表情が乏しく空間を演出するには物足りません。住宅設計ではいろいろと工夫を凝らすところとなります。
北海道・東北のような寒冷地の住宅では、2重窓からペアガラスの樹脂サッシに変わり、さらにLow-Eガラスが導入され、デザインの自由度は飛躍的に高まりました。このような大きな窓は寒さの元だったのですが、日射侵入率の高いガラスを採用すると、夜間を含めて窓から逃げる熱よりも流入する日射熱量のほうがはるかに多くなり、大きな暖房熱源に変わりました。また、ガラスの室内側表面温度も高くなり、窓辺の寒さが緩和されました。さらには4〜5㎜厚の大きなガラスも手軽に使えるようになりました。これにより、南面に大きな窓を設けてもサッシ枠で眺望が遮られることのない、開放的な空間がつくれるようになりました。ここからさまざまなデザインが生まれてきています。
しかし、高断熱住宅の窓デザインとして考えると、いろいろな問題点が存在しています。
ガラス率※のできるだけ高い構成を
※ガラス率…ガラスとサッシ枠を合わせた面積のうち、ガラスが占める比率
南面の窓からの太陽熱によって暖房エネルギーの削減を目指すには、南面の窓をできるだけ大きくすることが必要です。しかし、日本の住宅はすでに大きな窓が当たり前で、耐力壁を確保しつつさらに大きくする余地はあまりありません。そこで有効なのが、開口部の寸法はあまり変えないで、ガラスの面積比をできるだけ大きく取る手法です。大きなFIX窓にするのがその典型です。北海道に多いFIX窓と縦すべり窓の連窓タイプはこの目的には合っています。ただ、引き違い窓によるありきたりのデザインを避けようとして小さな四角い窓をグリッド状に配置したり、縦に細長い窓を並べたりするとガラス面積に比べてサッシ枠の面積が増えてしまい、取得できる太陽熱が減ってしまいます。窓面積に対するサッシ枠の面積が50%以上になることもあります。窓の断熱性能はガラスよりもサッシ枠のほうが悪く、これでは暖房エネルギーを減らすことができません。引き違い窓の場合でも、同じ寸法で2本引きタイプと4本引きタイプではガラス率が大きく違い、また気密性も悪くなるのであまりおすすめできません。ガラス率はできれば80%以上を確保したいものです。