「高校生建築デザインコンクール」は、道内の建築を志す高校生の勉強の励みとなり、将来の建築技術者となる若年層の育成と技術向上に寄与することを目的として、平成8年度から道が実施しているコンクールで、(公社)日本建築家協会北海道支部、(一社)北海道建築士事務所協会、(一社)北海道建築士会が共催しています。
新型コロナウイルス感染拡大によりさまざまな行事が中止される中、令和2年度は南幌町にある「みどり野きた住まいるヴィレッジに建つ北方型住宅」を設計課題として開催されました。
舞台は「みどり野きた住まいるヴィレッジ」
設計課題の場となった「みどり野きた住まいるヴィレッジ」は、北海道・石狩平野のほぼ中央に位置する農業のまち、南幌町の市街地で2016年から分譲されているプロジェクトです。
北海道と南幌町、北海道住宅供給公社、日本建築家協会北海道支部、北海道ビルダーズ協会、北海道がおススメする住宅事業者「きた住まいるメンバー」が手を組み、南幌町らしい暮らしとまちづくりを提案。都市と田園のバランスがほどよい南幌町だからこそ実現できる「クオリティ・ファーストの暮らし」をテーマに掲げ、まちづくりと住まいづくりが行われています。
南幌町の気候風土やヴィレッジ内の景観、住民同士のコミュニティー創出を目指した配置などを考慮しプランニングされた住宅は、見た目はもちろん「北方型住宅としてハイスペックな住宅性能を確保」「BISやBIS-Eなどの専門技術者による設計と施工」「きた住まいるサポートシステムによる住宅履歴の保管」といった性能・安全面でも高い品質で提供されています。
ヴィレッジに建つ住宅には、「クオリティ・ファーストの暮らし」を支えるデザインルールがあります。また、住宅の性能は、長期優良住宅認定基準や省エネ基準を超える「北方型住宅2020」の基準を満たしています。北海道で活躍する建築家がつくる素敵な空間と、地域のことを考えて家づくりを実践する地域工務店の技術がつくる、安心で高い性能を備えた住宅を手に入れることができます。
実際の販売エリアとデザインルールに沿って設計
きた住まいるヴィレッジのデザインルールでは、ゆったりと秩序あるまちなみを保つため、住宅を互い違いに配置(千鳥配置)することとし、敷地境界からの壁面後退距離を1m確保することとされています。また、千鳥配置によってできるスペース(隣地)を菜園や庭、共用の場として活用することとしています。
これらの条件はコンクールの課題でも同様に設定され、想定敷地を分譲区画の2区画分としています。また、夫婦に子どもが2人いる子育て世帯が住む、庭付き一戸建て住宅という前提も設計条件とされました。
これらの条件のもと、道内の建築系学科が設置されている高等学校9校から155名が参加し、「高校生らしい若々しさと創造性にあふれているか」「設計のコンセプトやデザインに魅力があるか」「立地条件を生かしているか」「きた住まいるヴィレッジのデザインルールに沿っているか」の4つを基準に審査が行われ、入賞作品が決定しました。
道内9校・155名・144作品の中から入賞作品が決定!
審査を経た155名・144作品の中から、北海道小樽未来創造高等学校の阿部大翔さんが設計した「 選宅肢のある家」が最優秀作品賞に選ばれました。
新型コロナウイルスの感染拡大で自粛を余儀なくされる中、家にいても飽きないよう暮らしの選択肢を持たせる工夫や、露天風呂やテラスなど家にいる時間が充実するような仕掛けが盛り込まれたプランとなっています。
審査員からは「シンプルな外観ながら光庭を取り囲む部屋の配置が良い」「平面計画の全方位に対する開放に力量を感じる」「 採光を取り入れつつ外部空間を室内に取り込む仕掛けが生活空間を楽しくさせている」「 良くまとまっている。露天風呂がなお良い」という声が寄せられ、高校生らしいフレッシュかつ豊かなアイデアが絶賛されました。
そのほかにも、優秀作品賞3点、佳作4点、特別賞2点が選ばれました。
実際に分譲されているエリアを想定した一般住宅の設計課題で、多くの参加者がしのぎを削った高校生建築デザインコンクール。未来の建築家たちが、その一歩を踏み出しました。
(文/Replan編集部)