今回、ご登場いただくのは北広島市に製造拠点を持ち、健康的な空気環境づくりに取り組んでいるピーエス株式会社の弘田七重さん。新型コロナウイルス感染予防に役立つと注目されている室内の空気環境の整え方について、さまざまなエピソードを交えて語っていただきました。
企画開発・営業リーダー
弘田 七重さん奈良県出身、北海道大学工学部建築工学科卒業。1997年、ピーエス(株)に入社。6年間、利用技術部で製品技術や設計業務を担当したのち、開発営業へ転属。住宅やホテル、公共施設などの室内の空気環境設計、提案活動に従事。建物のユーザーが心地よく過ごし、愛着を持てる空間、環境づくりを大切に日々、業務にあたっている。
目指したいのは
室温と湿度がちょうどいい春の心地よさ
時代の移り変わりとともに、住宅性能や暖房設備も格段の進歩を遂げ、現代の新築住宅では家の隅々まで「暖かいこと」が当たり前になりました。しかし、室温が25度を保っていても、どこか肌寒く感じる。そんな声も未だに聞こえてきます。その原因は室内の空気中に含まれる水分、湿度にあるかもしれません。
同じ20度の室温でも、湿度が上がることで暖かく感じ、低くなるほどに寒く感じるようになります。理想的なのは、20~22度の室温に対し、湿度を40~50%に保つことで、一年で最も心地よい春のような室内環境を実現することができます。健康的な生活を行うポテンシャルを最大限に引き出し活用するためにも、 室温と湿度を適度なバランスで保つことが役立ちます。逆に、室内の過湿環境はカビや結露、それによる腐食の原因にもなります。大切な資産である住まいのアンチエイジングにも、湿度を意識した暮らしを心がけることをお勧めしています。
また、冬も湿度が適正に保たれることによって、ウイルスの飛散や滞留を防ぎ、生存しにくい環境が保たれます。ピーエスは、1960年に日本でいち早く産業用の加湿器の販売を始め、室内環境と湿度の関わりについてさまざまな分野に提案を行ってきました。今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療機関や老人保健施設、福祉施設などからの問い合わせが急増。私たちは「加湿のプロ」として、新型コロナウイルス対策を前提にした健康的な室内環境の提案も行っています。
空気の流れを意識することで
守れる快適と健全
医療現場はもちろん、店舗や家庭でも新型コロナウイルス対策の一環として、室内の換気が強く意識されるようになりました。専門家会議では、30分に一度、すべての窓を開けて空気を入れ替えること、といわれています。しかし、厳冬期の北海道でそれを忠実に実行することは現実的とはいえません。
大切なのはどこから新しい空気を入れて、滞留する空気をどこから出すかということです。住宅に備えられている24時間換気は止めずにきちんと稼働させ、人が集まる場所では定期的に窓の開閉を行う。冬は寒くなるからと24時間換気を止めてしまうお宅も少なくありませんが、既存の設備を正しく使用しながら、室内の空気の流れを意識した組み合わせで換気することが大切ではないでしょうか。天井や壁、床がパネルヒーターなどの放射熱でまんべんなく温まり、適度な湿度が保たれている場合には、窓を開けて空気の流れをつくっても、急激に室温が下がることはありませんし、体感的な暖かさは守られます。また、特に寒くなりやすい場所を暖めるなど、効率の良い暖房の使い方をすることで、室内の快適性はさらに増します。健康的な室内環境を保つために、そうした点に着目した温熱環境づくりも、新築プランの中で検討されてみてはいかがでしょうか。
室内のCO2濃度が1000ppmを超えたときが、換気の目安とされています。市販のCO2センサーを活用し、来客時は換気を心がけ、適切な対応をすることも、感染症予防には有効かもしれません。
地域や住宅によって異なる
外的要因に合わせた環境整備
室内環境の「快適さ」や「健やかさ」を実現する方法は、住まう地域の気候風土によって変わります。日本は南北に長く、地域それぞれに季節の特性があり、その土地の風土に適合した建築がつくり出す快適さもあります。北海道でも、札幌は半年近く雪とともに暮らし、道東では1年のうち、1ヵ月だけ暖房を終日使わずに暮らせるというふうに、地域によって大きく気候条件が異なります。さらに目線を身近なところに移せば、同じ住まいでも季節によって移ろう自然条件に呼応して、室内環境は変化を止めることはありません。
一年を通じて室内で心地よく感じ、快適に暮らせる春のような温度、湿度、空気の流れを保つ室内環境を実現するためには、そうした違いや変化に敏感になることが大切。そして、それに合わせた温熱・湿度環境の整備や換気計画が必要です。湿度と温度の専門メーカーである私たちは1960年の設立以来、異なる環境や目的に最も適した自社製品を選び、心地よく健康的な室内環境を実現するプランを提案してきました。時には、とてもデリケートなビンテージワインや切り花、野菜などの品質を保つ室内環境づくりを手掛けることもあります。季節や地域によって変化する自然環境を取り入れながら、人や繊細なモノにとって優しく、健やかな環境をつくること。その実現のために、これからも自然やお客様、専門家との対話を大切にしながら、より良い提案を続けていきたいと考えています。
Case.1 リビング
パーティションデザインのPS HRヒータは、リビングやホールなど広い空間におすすめです。 大きな放射面でお部屋をやわらかく暖めてくれるうえ、ごく薄いルーバーは繊細でありながら視線をコントロールしてくれます。
Case.2 キッチン・水まわり
タオルウォーマーはバスルーム・キッチンで大活躍します。脱衣室ではヒートショックや湿気・カビの予防になり、いつもふかふかなタオルを使うことができます。キッチンではふきんがいつも清潔に乾き、家事の効率が上がります。
Case.3 玄関まわり
玄関は冷気の出入り口。きちんと暖房すれば、雨や雪を気持ちよく乾かし、そこからつながるリビングの暖かさも保たれます。コートウォーマーがあれば、いつも暖かいコートを羽織って出かけることができます。
Case.4 加湿器
蒸気加湿は潤いと同時に暖かさも得ることができるうえ衛生的で、医療福祉の分野で多く採用されています。PS施設用加湿器は、自動給排水・自動運転で希望どおりの湿度を実現。メンテナンスは年に一度、専門のサービススタッフが行うため、安心してお使いいただけます。