東京の会社に勤務していた柳谷多恵子さんが、青森県に帰郷したのは2015年。空き家となっていた実家を建て替えて住もうと考え、設計事務所と打ち合わせを重ねていた折、親戚宅の古民家の建て替えが決まり、古材や古道具を譲ってもらえることになりました。

「新築だけど、新しい中に懐かしいものを取り入れて、緊張せずに過ごせる空間にしたい」と、穏やかな流れの河川に面した新旧融合の住まいが2018年、むつ市に完成。新築当初からこの景観と空間をたくさんの人と分かち合いたいと考え、喫茶店やレンタルスペースとしても使える土間と板の間も用意されていました。

カウンターや椅子、食器や植物、メニューのコーヒーやパンなど、柳谷さんが好きなものだけを集めた空間を、kaffe tystとしてオープンさせたのは2019年11月。古い銭湯の取り壊しで譲り受けた下駄箱に天板を付けたカウンター、弘前市のgreenfurnitureで買いそろえた家具、青森市のプランツショップOOLJEEで選んだ植物などが、ゆったりとした空気をつくり出しています。

柳谷さんは今でも東京の会社に遠隔勤務しながら、土日を中心に月2〜6日間程度をkaffe tystの営業日にしています。「大々的な宣伝はしていませんが、SNSで見つけて探して来てくれたり、近所の方が散歩がてらに寄ってくれたりして、少しずつにぎわってきているのが嬉しいです」。

店内に飾られている花は、友人や近所の人からもらったものも多いとか。この日も取材中に、近くに住む柳谷さんのお母さんが「花っこ摘んできたよ〜」といって訪問してくる一幕も。「お店をやっていると、いろいろな場所から情報や物が集まってきます。新築当初はこの建物が何か分からなかった近所の方も、喫茶店を始めたことで『あ、ここに住んでいるんだね』って安心してくれているみたいです(笑)」。

Idea.1 風景や地域とつながる

川沿いの土手に面した掃き出し窓からの眺めはのどか。天気のいい日は川面のきらめきが美しく、雪の積もる冬は一面に白い世界が広がります。窓越しに通学や散歩で通りがかる近所の人とも自然に会話が生まれます。木張りの外壁は経年変化で少しずつ色を変え、周囲の景色になじみます。

Idea.2 古いものと新しいものが織りなすくつろぎ感

新築でありながら古材をところどころに取り入れ、「新しいのに古い」不思議な感覚を生み出している店内。内部塗装はすべて柳谷さんご本人の手によるもの。家具やカウンターなども一点一点吟味され、自分だけの隠れ家にいるような心地よい設えとなっています。

Idea.3 空間を彩り居心地をつくる植物たち

店内に飾られたさまざまな植物は、空間に彩りを与えると同時に席間をゆるやかに仕切る役割も果たしています。店主や他のお客さんからの目線から隠れて、ゆっくりくつろぎたい人のための配慮として、配置が工夫されています。

 おすすめMENU 

シナモンロール

スウェーデンの家庭でつくられているような、素朴な味を求めた渦巻き型のパン。珈琲パン、みかんパンとともに人気のメニューです。

tystブレンド

注文を受けてから豆をひき、ハンドドリップで入れる一杯。しっかりした味わいのネルドリップとすっきりとした飲み口のペーパードリップから選べます。

 

kaffe tyst(カッフェ ティスト)

所在地:青森県むつ市金曲1-22-47
営業時間・定休日:不定期
URL:https://kaffetyst.tumblr.com/
Facebook:https://www.facebook.com/kaffetyst/