「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2020」の発刊に合わせて、さまざまな意味での「デザイン」に優れた家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、宮城県仙台市を拠点に注文住宅を手がけるGinga architectsの武田 幸司さんです。
宮城県仙台市・Aさん宅/夫婦40代、子ども1人
設計/Ginga architects 施工/リュクス
「そこでしかできない何か」を
見つけ出すのが家づくりの醍醐味
どのような場所に家が建つのか。それをシンプルなカタチで読み解いていきます。その土地ならではの周辺環境やクライアント独自のライフスタイルなど、さまざまな影響で家のカタチは変形していきます。
どのように開いたら気持ちがいいか、どのように閉じたら落ち着くかを検討しながらたくさんの模型をつくり、いろいろと想像してみる。そうやってできていく「そこでしかできない何か」を手探りで見つけ出す楽しみが、家づくりの醍醐味だと考えています。
眺望の良さを最大限に生かし
閉じつつも開いた約27坪の平屋
仙台市の高台の住宅地に建つ、眺めの良い平屋です。周りには緑も多く、住宅地の東の端にあることから、東側の崖越しの眺望が大変良い敷地でした。しかし、東西が市道に挟まれた敷地であり、プライバシーを確保しながら、眺望の良さを最大限に生かす、閉じながら開くような住まいを求められました。
そこで、中庭やテラスのような半外部空間を内包する低めの「ハコ」と、庇がある「フタ」ような大屋根を建ぺい率いっぱいまで広げ、「ハコ」から「フタ」をパカっと持ち上げたように見えるシンプルな建ち方としました。
下階には、寝室や水まわりなどプライバシー性の高い空間を配置しました。旋回するように半階上がると、パノラマに眺望が広がるテラスのあるLDK。さらにぐるりと半階上がると子どもの遊び場であるロフトがあり、猫はキャットウォークを伝って家全体を回遊することができます。
階段を上がるごとに、スリット状の開口部から眺望がグラデーションのように開けていきます。中心のコア部分は構造壁になっていて、キッチン収納やトイレ、ピアノ置き場、おもちゃ箱を適宜配置しています。
プライバシーの強弱や、天井の高い低い、眺望の抜け感、家具や段差との振る舞いなど、ひとつながりの空間の中にさまざまな居場所があり、猫のように好きな居場所を見つけては転々と移動できる、伸びやかで居心地の良い回遊のある住まいとなりました。
■建築DATA
構造規模/木造・平屋建て
延床面積/91.05㎡(約27坪)