この4年間でアトリエは様変わりしています、とNさん。「作業台を置いたのはここ最近です。店舗の仕様が変わるとアトリエも変化します。自由度のある空間を水谷さんに構築してもらいました」

鞄作家のアトリエ兼住宅という併用の住まい。通りに面した北側をアトリエ、南側を居住空間と南北にボリュームを分けた配置になっています。1階、2階にそれぞれ設けた引き戸と、「非日常的なものを取り入れたい」という願いをカタチにした螺旋階段を介してアトリエと住宅が繋がり、「住む」と「働く」が密接ながらも遮断されたバランスのいい空間となりました。

◎家族構成/夫婦40代、子ども2人
◎構造規模/木造・2階建て
◎設計/ミズタニテツヒロ建築設計
◎施工/(株)明匠建工

踏板と蹴上げを折紙のように曲げて仕上げた鉄製の螺旋階段。「天窓から螺旋階段を抜けて降りる光が美しいんです」とNさん

寝室とつながるアトリエの2階は打ち合わせスペース。天井や床に木を配した居心地の良い空間に
居住空間に心地よい明るさをもたらす天窓。突き当たりは寝室で、引き戸を介してアトリエ2階につながる

木をふんだんに使用したアトリエとは異なり、タイル床や薪ストーブ、鉄の螺旋階段など居住空間はスタイリッシュな雰囲気に

ダイニングテーブルは家族の集う場所。「タイル床は夏はひんやりと心地よく、冬は薪ストーブの熱を伝えてくれるのでとても暖かいんですよ」。Nさんや子どもたちの作品が室内の随所に飾られている
壁に飾られた100号のキャンパスは、子どもたちが絵を描き、Nさんが色を加えた。引き戸の向こうにアトリエが見える

事務仕事を一手に引き受ける奥さん。「子どもの帰宅に合わせて、家事をするために一度家に戻ることがなくなったのが一番嬉しいかも」。リビングを見渡せるアイランドキッチンは奥さんのお気に入りの場所

一枚板を重ねたオブジェのような螺旋階段はNさんの創作意欲を掻き立てる。「木が裂けたり、色が変化したりと、年月と共に姿を変えていくこの階段を眺めながら、毎日仕事をしています」

鏡の引き戸がプライベートをしっかりと遮断。「お客様も姿見として使用できるので機能性も抜群。水谷さんが考えてくれた空間は、職と住の境界を曖昧にしないので快適です」

薪棚のあるアプローチを通り、室内へ。アトリエも住まいも、玄関は一つ

外壁のブルーはNさんのテーマカラー。店舗にも住宅にも見える外観にしたいというNさんご夫妻の希望を叶えたデザインになっている