昭和40年代に建てたというAさんご一家の住まいは、小屋裏を含めた3階建ての二世帯住宅。修繕や増築など手を加えながら、長い年月を過ごしてきました。

リノベーションを決めたのは、90歳を超えたお母さんが施設への入居を決めた一昨年のこと。2階で暮らしていたAさんご夫妻も階段が負担になってきたこともあり、家族で検討した結果、基礎と土台の一部だけを残した大規模なリノベーションを行うことになりました。依頼先は無垢材や珪藻土など、自然素材をふんだんに使った心地よい住まいづくりに定評のある芦野組です。

ご夫妻が新しい住まいに求めたのは、「趣味を生かした開放的でシンプルな住まい」。2階はロフト的なフリースペースと洋室の2部屋に絞り、ほぼ平屋的に暮らせるような減築リノベーションを選択。1階から続くリブ仕上げの勾配天井が、室内に開放感をもたらしています。

トドマツ板張りの外観。手前がアトリエになる。表札は奥さん手づくりのステンドグラス仕様
トドマツ板張りの外観。手前がアトリエになる。表札は奥さん手づくりのステンドグラス仕様
ロフトのような2階空間は、Aさんたっての希望。「1階は低めの天井高なのですが、勾配天井と吹き抜けがもたらす開放感が気持ち良いんです」
ロフトのような2階空間は、Aさんたっての希望。「1階は低めの天井高なのですが、勾配天井と吹き抜けがもたらす開放感が気持ち良いんです」
2階のフリースペースは現在息子さんが使用中。将来的には来客用のスペースにする予定
2階のフリースペースは現在息子さんが使用中。将来的には来客用のスペースにする予定

新たな住まいを彩るのは、奥さんが制作したステンドグラスの数々。10年以上つくり続けているというステンドグラス作品が、建具や壁など室内の至る箇所に配されています。「これまでつくり続けた作品が、こうやって生かされるのはとても嬉しいです」と、奥さん。ステンドグラスと無垢材の相性も良く、美しく優しい空間に仕上がりました。

陽が落ちると、ステンドグラスに明かりが灯る仕様に
陽が落ちると、ステンドグラスに明かりが灯る仕様に
アトリエへと向かう扉。室内のすべての建具にステンドグラス作品が埋め込まれている
アトリエへと向かう扉。室内のすべての建具にステンドグラス作品が埋め込まれている
制作期間1年近くに及んだ、奥さんの大作の一つ。「想像以上に無垢材との相性が良く、つくった甲斐がありました」と大満足の奥さん
制作期間1年近くに及んだ、奥さんの大作の一つ。「想像以上に無垢材との相性が良く、つくった甲斐がありました」と大満足の奥さん
ステンドグラスの照明が彩るキッチン。勝手口からウッドデッキに出ることもできる
ステンドグラスの照明が彩るキッチン。勝手口からウッドデッキに出ることもできる

車庫だったスペースは、奥さんとシルバーアクセサリー職人である息子さんのアトリエに。ステンドグラスづくりの際に出るガラスの破片で猫が怪我をしないよう、アトリエにつながる扉のみ開き戸になっています。「床がコンクリート土間なので、掃除もしやすくて嬉しいです」と奥さん。手洗いも設け、快適な作業環境が整いました。「1日中アトリエにこもっていたいくらい」と、奥さんの創作意欲もますます膨らみます。

車庫だったスペースはそのままアトリエに。奥さんがステンドグラスを、息子さんがシルバーアクセサリーを制作するものづくり空間となった。「出窓の棚に作品が並んでいるので、時々お店に間違えられるんです」と笑顔の奥さん
車庫だったスペースはそのままアトリエに。奥さんがステンドグラスを、息子さんがシルバーアクセサリーを制作するものづくり空間となった。「出窓の棚に作品が並んでいるので、ときどきお店に間違えられるんです」と笑顔の奥さん
大きな連窓から柔らかな光が注ぐダイニングには、カツラの無垢材を使用した造作テーブルが
大きな連窓からやわらかな光が注ぐダイニングには、カツラの無垢材を使用した造作テーブルが
昔の物置の一部と浴室スペースを使って新たに設けた猫たちもくつろぐ夫婦の寝室
昔の物置の一部と浴室スペースを使って新たに設けた、猫たちもくつろぐ夫婦の寝室

Aさんが一番お気に入りの場所は、薪ストーブのある広い土間玄関。「妻はアトリエにこもり、僕は薪をくべたり、炎を見たり。ここにいる時間が一番長いかも。念願の薪ストーブのある暮らしを満喫しています」と話すAさん。やわらかな炎の暖かさに誘われた猫たちも、薪ストーブを囲みながら気持ち良さそうにくつろいでいます。

薪ストーブのある広い土間玄関は、4.5帖の洋室と既存の玄関スペースをつなげて実現。ランダムに埋め込まれたレンガタイルがアクセントに。玄関ドアのほか、テラスドアからの出入りも可能なので、薪の持ち運びがスムーズ
薪ストーブのある広い土間玄関は、4.5帖の洋室と既存の玄関スペースをつなげて実現。ランダムに埋め込まれたレンガタイルがアクセントに。玄関ドアのほか、テラスドアからの出入りも可能なので、薪の持ち運びがスムーズ
シューズクロークの扉は取り壊された古い家のもので、今では貴重なスギの一枚板。「実はトイレの扉なんです。今、表にしているのが本来は内側になるんですよね。鍵も当時のものなんですよ」とAさん。シューズクロークの中には収納専用の小屋裏スペースがある
シューズクロークの扉は取り壊された古い家のもので、今では貴重なスギの一枚板。「実はトイレの扉なんです。今、表にしているのが本来は内側になるんですよね。鍵も当時のものなんですよ」とAさん。シューズクロークの中には収納専用の小屋裏スペースがある

「以前の住まいは長く暮らしていた分、愛着もありました。けれど、大きく間取りを変えていないので、戸惑いや違和感はまったくなく、新しい住まいの暮らしもすぐになじみました。快適さや住み心地は格段に良くなり、猫たちも楽しそうです」と充実した笑顔を浮かべる奥さんでした。

かつて洋室だった場所に、洗面台・洗濯機・浴室などの水まわりを直線に整えた
かつて洋室だった場所に、洗面台・洗濯機・浴室などの水まわりを直線に整えた
トイレの手前には猫用のトイレも。近くに換気扇があるため、匂いも気にならない
トイレの手前には猫用のトイレも。近くには猫用トイレ専用の換気扇があるため、匂い・砂ホコリも気にならない