Kさんは沿岸部の浪江町出身。以前はこの地でご両親が名物精肉店を営んでいましたが、震災の影響で避難を余儀なくされ、一家は離散状態に。2年半ほど前に避難指示が解除されたのを機に、Kさんは避難先の秋田県から奥さんを伴って故郷に帰還しました。

和のテイストも漂う落ち着いた外観。屋根には通常より太めの垂木を使用し、その分、軒を長めに出した。外のフェンスにまでヒノキを用いる徹底ぶり。ヒノキは弾力があって衝撃に強く、水にも強いという利点がある
和のテイストも漂う落ち着いた外観。屋根には通常より太めの垂木を使用し、その分、軒を長めに出した。外のフェンスにまでヒノキを用いる徹底ぶり。ヒノキは弾力があって衝撃に強く、水にも強いという利点がある
家に入るとふんわりと木の香りが。玄関の上がり口にはケヤキ、天井にはスギと、ヒノキの他にも適材適所の樹種を用いている
家に入るとふんわりと木の香りが。玄関の上がり口にはケヤキ、天井にはスギと、ヒノキの他にも適材適所の樹種を用いている

お二人の新居を手がけたタカハシホームは、良質な木を知り尽くした材木店を母体とする工務店です。木のプロとしての目利きを活かし、全国各地の良質な木材を追求してきました。家づくりに使用するのは、宮城県白石市にある約300坪の倉庫の中で、しっかりと天然乾燥させた木材たちです。同社が得意とするのは、強度や耐久性に優れたヒノキをふんだんに取り入れた骨太耐震住宅「檜乃家」です。こちらのKさん宅も、土台、柱、梁、桁にいたるまで贅沢にヒノキを採用した住まいとなっています。

勾配天井に原木からせり落としたという上質なヒノキの梁が豊かな表情を添える
勾配天井に原木からせり落としたという上質なヒノキの梁が豊かな表情を添える
ヒノキの床、柱、梁と自然素材の塗り壁を採用した健康的な空間。床の厚みは30㎜、柱は8寸角と安心構造にも自信あり
ヒノキの床、柱、梁と自然素材の塗り壁を採用した健康的な空間。床の厚みは30㎜、柱は8寸角と安心構造にも自信あり

完成した家は、ご夫妻が開業する施療院を併設した店舗併用住宅。たっぷりと使われたヒノキが香り、まるで森林の中にいるような空気の心地よさをもたらしてくれます。東北の中では温暖で住みやすい土地柄ながら、断熱性能は北海道基準並み。「真夏日でも、家の中に入るとスーッとした清涼感がありました」とお二人は口を揃えます。

高齢者や足に痛みのあるお客様も多いので、施療院のポーチは蹴上げを低めに設けた
高齢者や足に痛みのあるお客様も多いので、施療院のポーチは蹴上げを低めに設けた
施療院の施術室。左奥が待合室になっており、右奥から住居スペースへとアクセスできる
施療院の施術室。左奥が待合室になっており、右奥から住居スペースへとアクセスできる

また、店舗から住居スペースへ、そして住居スペースの玄関から収納室、キッチンへの動線もポイント。目の病気を抱える奥さんも、ストレスなく家の中を移動できるよう、効率的な動線が確保されています。

自宅玄関の左手には収納スペース、その先にはキッチン、ユーティリティが続く。一直線のシンプルな動線は奥さんもお気に入り
自宅玄関の左手には収納スペース、その先にはキッチン、ユーティリティが続く。一直線のシンプルな動線は奥さんもお気に入り
お父さんこだわりの和室。床の間や建具にいたるまでタカハシホームの造作によるものだ
お父さんこだわりの和室。床の間や建具にいたるまでタカハシホームの造作によるものだ

実は同社の家に先に惚れ込んだのは、Kさんのお父さんでした。「木造りの家であることはもちろん、家族のライフスタイルに寄り添ったプランニングや、家具職人によるオリジナルの造作家具も、父には魅力だったようです」とKさん。お父さんがご自身の新居建設の話をタカハシホームと進めていた流れで、Kさんご夫妻の新居も同社に依頼することになったそうです。

ヒノキで造作されたダイニングテーブルは使用感も抜群
ヒノキで造作されたダイニングテーブルは使用感も抜群

「当時、私たちは秋田におり、何度も打ち合わせに戻って来られませんでしたから、希望を伝え、あとは父とタカハシホームさんにお任せしました。この家は、精肉店なきあと、浪江に帰還した昔のお客さんたちが気軽に集える場所になりました。それが嬉しいです」とKさんは喜びを噛みしめていました。