人生の一番限られたリソースを大事にしよう

地球のためにCO₂削減のために、今の社会を変えなければならない。こういうとちょっとモティベーションがわかないかもしれません。ではより人生にとって切実な問題を考えましょう。人生において、最も限られた、大切にしなければならない資源・リソースは何でしょう?

例えば「お金」はどうでしょうか? お金は確かに有限ですが、収入や支出で工夫がいろいろできますし、多ければそれだけ幸せというものでもありません。

最も大切にしなければならない限られたリソースはなにか? 筆者はズバリ「時間」だと考えています。1日は誰にとっても24時間しかありませんし、一度しかない人生の中で健康な期間はさらに限られます。ごく限られた時間を自分の望むように自由に最大限に活用できることは、幸福な人生に不可欠ではないでしょうか(図3)。

図3 一番限られたリソース 人生の時間を上手に使えている?
地球環境やエネルギーも有限ですが、我々にとって一番限られている資源はなんといっても「時間」です。1日は誰にとっても24時間ですが、「仕事」や「通勤」に時間をとられすぎては、生活をする時間がどんどんなくなってしまいます。

日本人は生活への満足度が低い

しかしいざ、自分の1日24時間を振り返ってみると、自分の思うように有意義に使えている時間がごく少ないことに気づきます。まずは朝の通勤。電車なら満員でおしくらまんじゅう、車で通えば大渋滞なのですから、朝一番にいきなり疲れてしまいます。会社では大きな建物にギュウギュウに押し込まれて長時間労働にサービス残業、夕方の通勤でクタクタに疲れてようやく帰宅……。我々は貴重な時間を、したくもないことに膨大につぎ込んでしまっているのです。

生活への満足度を世界的に調査した結果を図4に示します。ヨーロッパやアメリカの先進国では生活満足度が高い一方、日本の満足度はあまりよいとは言えません。この原因には仕事のストレスなどが挙げられていますが、長時間の労働や通勤のために疲れ果て、自分のやりたいことに時間と体力を使えていないことも影響していると思います。

図4 日本人の生活満足度はどれくらい?
国際的な調査によると、日本人の生活満足度は他の先進国に比べ低くなる傾向があります。仕事のストレスなどが原因として指摘されています。
出典:OECD Society at a Glance 2019

今の日本人の生活は、膨大なCO₂を排出して地球に負担をかけながら、暮らす人の満足にもつながっていない。いったい誰のためなのか分からない、ひどく「効率の悪い」社会なのかもしれません。

日本人の生活時間を見てみると

図5に、35〜39歳男女の生活時間を示しました。男性で目立つのはなんといっても仕事の530分=8時間50分です。日本における長時間労働の問題は最近特に注目されるようになり、「働き方改革」として改善への取り組みが始まっています。

図5 1日24時間1440分をどう使う?
35~39歳男女の平日における、各行動に費やす時間(分)を示しています。男性は仕事時間が長いのはもちろんのこと、通勤にも1時間以上かかっています。仕事だけでなく通勤にも多くの時間を使ってしまうことは、家事や育児に時間を避けない大きな原因なのでしょう。
出典:総務省統計局 社会生活基本調査2016

もう一つ注目したいのが通勤時間です。図5では男性で68分=1時間8分かかっていますが、これは地域や職業によって大きく違うでしょう。ちなみに都道府県で一番通勤時間が長いのは神奈川県の1時間45分です。職場と住まいが離れていると、膨大な時間と体力が満員電車に吸い取られてしまうのです。

現在の生活の中で一番犠牲にされているのは睡眠時間です。図6を見ると、1976年に比べて大幅に減少していることがわかります。睡眠不足は体調の悪化につながるだけでなく、メンタルの不安定化や不満感にもつながることが指摘されるようになりました。

図6 短くなっている睡眠時間
1976年に比べて2016年には男性有業者で43分、女性有業者で30分も睡眠時間が短くなっています。
出典:総務省統計局 社会生活基本調査

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