ミスターZEH・小山氏に聞くZEH最前線
エコワークス（株）社長の小山貴史さんは、住宅工務店の最先端を突っ走るスゴイ人。一般社団法人ZEH推進協議会の代表理事も務めています。九州を中心に高性能なゼロエネルギー住宅を販売するだけでなく、日本中に本気でZEHを広めようとしている、まさにミスターZEHです。今日はその小山さんから直接、なぜZEHにこだわるのか、ZEHの先にはどんな世界が開けているのかを伺いました。
——まずはじめに、小山さんがZEHに取り組む理由を聞かせてください。
小山 なにより、お施主さんの経済メリットと快適・健康メリットが大きいということです。新しいZEHの家に住まわれたお施主さんは皆さん「話半分と思っていたけど本当に光熱費がマイナスになるんですね！」「予想以上に暖かくてびっくりしました。快適過ぎて幸せです」という驚きと満足を、口々にいわれますよ。建物の断熱性能を高め、高効率設備と太陽光発電でゼロエネルギーを達成することは、間違いなく日々の生活の満足度を上げてくれる。日々のお客様のご感想を聞いて確信しています。
——小山さんの会社にくるお施主さんははじめからエコとかに興味があるのでしょうか？
小山 ほとんどの方ははじめ、地球環境とか省エネとかにはご興味がありません。家を建てる時は、まずデザインやプラン、内部空間や素材に興味がいくのは自然なことだと思います。そういった家づくりの本質の部分でまず勝負となるのは当然です。もちろん、一番気にされるのは家づくりにいくらかかるのか、というコストの問題ですよね。
そうして色々と悩まれているお施主さんに、住んだ後で後悔することがないように建物の性能を確保しゼロエネルギーになるようしっかりアドバイスすることは、住宅のプロである我々の責任だと考えています。
——一生に一度の家づくり、お施主さんも緊張していますよね。
小山 家は、人生の中で何度も買うことができません。家電や車だったら1回2回失敗すればポイントが分かってきて、3回目にはだいたい満足できる買い物ができますよね。しかし家を買うのは、ほとんどの人にとって1回きり。だから、毎日家を建てて売っている供給側のプロと、1度きりで家を買うお施主さんの間で、知識や考えのギャップが非常に大きい。だからこそ家のプロである供給側が、お施主さんのことを本当に考えて十分な性能を確保してあげることが大事なのです。
——小山さんの会社では、断熱・気密のレベルは1つだけと聞きました。
小山 断熱・気密の性能は1つしかありません。ZEHの強化型外皮（UA値0.5以下）だけです。エコワークスを選んでくださるお施主さんは、プランやデザイン・天然乾燥の木の良さなど建築の魅力をはじめに評価してくださいます。
一方で、住宅の性能のことまで理解することはやはり難しい。だからお客さんが迷われることがないよう、プロである私たちの方で、暖かく暮らせるよう自信をもっておすすめできる、十分な断熱レベルを標準としています。長期優良住宅の認定も全棟とっていますから、長く安心してお住まいいただけます。
——省エネ基準ギリギリの家をZEHレベルに強化するためのコストアップはどれくらいなのでしょうか？
小山 これは誤解している人が多いのですが、ZEHにするための追加コストは実は大したことがありません。温暖地であれば、坪単価はたった1〜2万円のアップで十分なのです。
ZEHにするためには、①断熱を強化する、②高効率設備を入れる、③太陽光発電を入れる、の3つが必要です。このうち②の設備は、今やエアコン・エコキュート・LEDといった高効率タイプが当たり前なので追加コストはゼロです。③の太陽光発電も、FIT（固定価格買取制度）のおかげで10年以内に元がとれて、その後は節電と売電したぶん儲かる。つまり長い目で見れば、実は太陽光発電のコストはマイナスになります。そうなると本当にコストがかかるのは、実は①の断熱強化だけなのです。
ここ数年で、高断熱の窓の値段が大きく下がったおかげで、断熱強化にかかる追加コストも小さくなっています。だから坪あたり1〜2万円のアップで、十分な外皮性能が確保できます。
——その程度のコストアップだったら、しっかり断熱・気密を確保した方が絶対いいですよね。
小山 実は私も、はじめは断熱・気密のメリット・効果を十分に理解していませんでした。はじめた頃はまず、国が推奨するハイレベルの仕様にとにかくキャッチアップしていたのが正直なところです。
ところが断熱・気密の性能を高めていったら、住んだ後のお施主さんの反応が全然変わってきたんですね。新しい家が暖かくて本当に快適だ、とみなさん口々にいわれるようになった。断熱・気密は本当に大事なんだと痛感しましたね。気密測定も全棟計測し、全て相当隙間面積C値は1を切る十分な気密レベルも必ず確保しています。
——お施主さんは設計の時に断熱・気密の意味を理解されますか？
小山 住まわれた後には、みなさん「想像以上に暖かくびっくり」と仰ってくださいます。ただ「想像以上に」ということは、建てる前には断熱・気密の効果をちゃんとお伝えできていないということですよね。家を設計している段階で、建物性能をしっかり高めることが快適な暮らしに不可欠であることを理解いただけるよう、まだまだ工夫が必要だと感じています。
——世の中にはZEHはやらない、という建設供給者も多くいると思います。なぜでしょうか。
小山 住宅供給者がZEHをやりたがらない最大の理由は「太陽光発電をつけたくない」ということです。太陽光発電の単価は今では1kWあたり30万くらい。標準的なサイズの5kWであれば150万円といったところです。
初期費用が150万円と聞くと高いと思われるかもしれませんが、これは長い目でみれば逆に利益が出るお得な話です。FIT（固定価格買取制度）のおかげで、設置後は10年間のうちに元が取れるよう、割高な価格で発電した電気を買い取ってもらえます。元がとれた後は、発電した分がそのまま利益になっていくのです。初期コストにばかり意識がいって、長期での利益を知らない人が、お施主さんだけでなく供給者側にも多いのが現状です。
——建設業者の営業の人も、初期費用が高くなる話をしたがらないとか。
小山 費用が高くなる話を早い段階で切り出すと、お客さんに逃げられてしまいます。営業は契約がとれてナンボの世界ですから、太陽光発電についても積極的ではないのが実情です。
エコワークスでは、ちゃんと長期で元がとれるというご説明を、具体的なデータをお見せしながら丁寧にしています。ちゃんと説明を受けてメリットを理解されれば、お施主さんは特別な事情がない限り、まず間違いなく太陽光発電の設置を選ばれます。エコワークスの太陽光発電の設置率は9割を超えているので、ほとんどの家がZEHになっています。
結局のところ、太陽光発電自体が問題なのではなく、お施主さんにそのメリットをちゃんと説明できていないことが問題なのです。太陽光発電を後付けしようとすれば余計にコストがかかりますし、見た目も美しくありません。家を建てる時にしっかり設置することをおすすめしますね。
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