「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2019」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、青森県弘前市を拠点に注文住宅を手がける株式会社蟻塚学建築設計事務所の蟻塚学さんです。
青森県弘前市・Kさん宅/夫婦30代、子ども2人
設計/(株)蟻塚学建築設計事務所 蟻塚 学 阿保 結生
施工/(有)長谷川工務店
住宅は、それぞれ違う生活のいれもの
「住宅は生活のいれもの」であり、その生活は人によって千差万別。敷地の特性も既存の建物もひとつひとつ違います。私たちは設計のプロだけれども、“今目の前にいるこの人”の住宅を設計するのは初めてであり素人です。ですから積み上げてきた定石ではなく、目の前の人のためにひとつひとつ積み上げていく思考で住宅を設計することを心がけています。
住宅地という静かな海をゆっくりと進む船
区画された敷地のすぐ隣に並ぶ2階建ての住宅、南と東に面する道路を行き交う車と歩行者。道路をはさんで東側に大きな樹木のある公園。開くべき方向が制限された住宅地において、素直にその制限に従って閉じ・開くことで空間をかたどりました。できあがった空間に立ってみると、水面から少し浮いた甲板に立って公園の緑を眺めているように感じられます。
進むべき方向に船首を向けて、凪の海をゆっくりと進む船。
住宅地という静かで、いろんな視線を含んだ海を、緑のある公園に向かってゆっくりと進む船。
ここに住むのは育ちざかりの二人の子どもと共働きの夫婦。休日の潤いも大切にしながら、圧倒的に機能的な空間を目指すこととなりました。大きなタイル張りの浴室を中心に、機能動線がぐるっとひとまわりできる回遊性は、水まわりをコンパクトにまとめるのと同時に2階の空間にありがちな閉塞感を減じています。オーバーハングされた1階部分は木製ルーバーで覆われた設備ヤードとなると同時に、光や風を通しつつセキュリティ上の配慮もされた設えです。
■建築DATA
構造規模/木造・2階建て
延床面積/219.04㎡(約66坪)